電車は伊豆半島の右側の海岸線を走って下田に向かい下っているので、私たちにとっては進行方向左側に海をしたがえて電車は進んでいく。時々海からはずれて海が見えなくなっても、またすぐに海の近くに戻ってきたりする。
あるところでは、丸く小さな入り江というか湾みたいな形のところを通り過ぎたが、その丸い入り江をぐるりと囲む形で山が入り江までせまっている。そしてその入り江を囲む土地には、小さな家々がぎっしりと立ち並んでいるという景色のところがあった。たぶんこの辺ではよくある光景なのだと思う。
山々は新緑の季節も終わり、もう緑もだいぶ濃くなっている。でも雨のせいでその緑もぼんやりとかすみ、ところどころ濃い霧のような雲みたいなかたまりが漂っている。そして海にも同じく雨が降っているので、丸い入り江の海上にはうっすらともやのようなものが立ち込めている。
空も海も光が少ないため、黒に近い濃いグレーで色のない世界だ。それに山々の緑も私たちから遠ざかるに連れ、雨にかすみグレーに近くなっている。こうなると空も海も緑もグレー一色。色のない世界でさぞかしつまらないかと思いきや、これがまたまるで墨絵のような雰囲気をかもし出していて、なんともいえない風情があった。
昔は墨絵の絵などを見ると、それはそれですばらしい絵だとは思ったものの、あくまでも墨絵は表現方法のひとつであり、景色を写実的に写し取ったものだとは思わなかった。でも今日のこの雨にかすむ空や海や山を見て、墨絵の景色ももしかしたら現実の景色をそのまま写し取ったものなのかもしれないな、という感想をもったのであった。
晴れていて光にあふれた景色が良いはもちろんだが、雨で色のない世界もまたいいものだ。人生のすばらしさをまた一つ知った瞬間だった。
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